韓国語学習を始めてしばらくすると、多くの人がぶつかる壁があります。
それは 発音の壁 です。
・自分では正しく発音しているつもりなのに、相手に通じない
・聞き取れているはずなのに、いざ口に出すと違う音になってしまう
・似たような音が多すぎて区別できない
こういった悩みは、韓国語学習者に共通するものです。
特に日本語を母語とする人にとっては、韓国語特有の発音や細かな音の違いを習得するのは簡単ではありません。
しかし、正しい学び方と練習法を知れば、この壁は必ず越えられます。
この記事では、韓国語発音上達のための3つの重要ポイントを詳しく解説します。
それは
1.カタカナ(ふりがな)をつけない
2.日本語の近い音を探して頭で理解する
3.声に出して練習する
どれもシンプルなことですが、この意識がとても大切です。
それぞれのポイントを、実例とともに詳しく見ていきましょう。
カタカナ(ふりがな)をつけない
ハングルを覚えたての頃、多くの人が「読みやすくするため」にカタカナでふりがなを振ります。
例えば、안녕하세요 を「アンニョンハセヨ」、김치 を「キムチ」といった具合です。
もちろん最初のうちは仕方ない部分もあります。
見慣れない記号(ハングル)を読むこと自体がまだ難しいため、カタカナに頼るのは自然な流れです。
しかし、このカタカナ表記は早めに卒業しないと、発音上達の大きな妨げになります。
「오」と「어」はどちらも「オ」じゃない
韓国語には、日本語の「オ」に近い音が少なくとも2種類あります。
・오 [o] :口を丸くして前方に突き出すように発音
・어 [eo]:口を縦に開き、やや奥で発音
どちらも日本語のカタカナにすれば「オ」になってしまいますが、実際の音はかなり違います。
例えば、「오빠(お兄さん)」と「어머니(お母さん)」のオは、全く別の口の形・舌の位置で発音されます。
カタカナに頼ってしまうと、この違いを頭も耳も認識できなくなります。
結果として、実際の会話で通じにくくなるのです。
「김치」と「キムチ」は別物
日本語でもおなじみの「キムチ」。
韓国語では 김치 と書きますが、実際の発音は日本語の「キムチ」とは違います。
韓国語の「김」は、「ム」ではなく唇を閉じた鼻音(m)の響きが強く、日本語のように母音「ウ」が明確に入りません。

私個人の感覚では「キmチ」に近いです。
つまりカタカナで「キムチ」と書いてしまうと、発音のニュアンスが完全に失われ、音のイメージも間違って頭に刷り込まれてしまいます。
カタカナ依存がもたらす悪循環
カタカナに頼る学習は、次のような悪循環を引き起こします。
・正しい発音で覚えられない
→ 間違った音のまま記憶
・その音が聞き取れなくなる
→ リスニング力も伸びにくい
・口の筋肉が動かない
→ 会話で相手に通じにくい
つまり、自分が発音できない音は聞き取りも難しいため、スピーキングとリスニングの両方が伸び悩む原因になります。
初級者でもできる「カタカナ卒業」への移行法
「そうはいっても、ハングルを全部覚えていないし、何も書かないと読めない…」
そんな人におすすめなのが、自分だけの変則ルールを作る方法です。
例えば、似た音の場合は片方だけカタカナ、もう片方はハングルで残す。
あるいは、音をイメージしやすいアルファベットを借りてくる方法も有効です。
・엄마(お母さん)の「어」:カタカナで「オンマ」
・오빠(お兄さん)の「오」:ハングルのまま「오ッパ」
・김치(キムチ):アルファベットを混ぜて「キmチ」
こうすると、見た瞬間に「あ、この音は普通のオじゃない」「鼻音で終わる音だ」というイメージが頭の中で浮かびやすくなります。
大切なのは、自分が正しい音を思い出せる表記にすることです。
日本語の近い音を探して頭で発音を理解する
韓国語には「日本語にない音」と「日本語にあるけど意識しない音」がある
韓国語の発音の難しさの一つは、日本語のカタカナ表記では区別できない音が多いことです。
例えば、日本語では「ン」で済ませてしまう音が、韓国語では発音の仕方によってまったく別の子音として区別されます。
一方で、「日本語にはない」と思っている音の中には、実は私たちが普段無意識に発音している音も少なくありません。
これらの音を日本語の中から探し出し、頭で理解することが、発音上達の大きな鍵になります。
代表例:「ㅁ」「ㄴ」「ㅇ」の鼻音
韓国語学習者が最初につまずく鼻音が、ㅁ(m)・ㄴ(n)・ㅇ(ng)の3つです。
日本語では全部「ン」や「ム」として表記してしまうため、違いが曖昧になりやすいのです。
1) ㅁ の音 — 唇を閉じる「ン」
・日本語の例:さんま の「ん」
・発音方法:唇をしっかり閉じて鼻から音を出す
この音は英語の m に近く、母音が入らずに鼻音だけ響かせます。
韓国語の 김치(キmチ) の「김」や 밤(夜) の「밤」に使われます。
2) ㄴ の音 — 舌先を歯茎に当てる「ン」
・日本語の例:サンタクロース の「ん」
・発音方法:舌先を上の前歯のすぐ裏(歯茎)に当てて鼻から音を出す
英語の n に近い音です。
韓国語の 단계(段階) や 한글(ハングル) に出てきます。
3) ㅇ の音 — 口を開けたままの「ン」
・日本語の例:だんご の「ん」
・発音方法:口を開けたまま、喉の奥で鼻音を響かせる
英語の ng(sing の語尾)に近い音です。
韓国語の 당구(ビリヤード) や 방(部屋) に含まれます。
練習法:日本語と韓国語を並べて発音
次のペアを声に出してみてください。
日本語の単語と韓国語の単語が同じ鼻音の位置になるはずです。
韓国語 | 日本語 | 鼻音の種類 |
김치(キmチ) | さんま | ㅁ(m)唇鼻音 |
단계(たんげ) | サンタ | ㄴ(n)歯茎鼻音 |
당구(たんぐ) | だんご | ㅇ(ng)喉鼻音 |
このように日本語の中の音をヒントにすると、発音の位置と響きの違いが分かりやすくなります。
他にもある!ふりがな表記では表せない韓国語の音
鼻音以外にも、ふりがな表記では表せない韓国語の音はたくさんあります。
ㄹ(リウル)の発音
- 語中・語尾の ㄹ は、日本語の「ラ行」よりも舌を歯茎にしっかり当てる
- 例:발(足) → 「パr」
가을(秋) → 「カウr」



「パル」と表記して、それで覚えてしまうとほぼ韓国人は通じないので「ㄹ」の時はとくに注意が必要です
ㅍ(ピウプ)の激音
- 空気をしっかり吐き出す点で、日本語の「パ行」よりも強い
- 例:파도(波) → 「パド」
ㅊ(チウッ)の激音
- 日本語の「チ」よりも息を強く出す
- 例:친구(友達) → 「チング」
こういった音も、日本語の似た音と比べながら練習すると、舌や唇の動きを理解しやすくなります。


理解から発音へ
ここで重要なのは、耳だけで覚えようとしないことです。
耳で聞いても区別できない音は、口の形・舌の位置・息の出し方といった物理的な条件を頭で理解することで、はじめて再現できるようになります。
理解と実践をセットにすると、学習効率が一気に上がります。
声に出して練習する
発音は“筋肉トレ”
韓国語の発音は、耳で覚えるだけでは完成しません。
口の筋肉、舌、喉の動きを正しく鍛えることで、初めて「聞こえた音をそのまま出せる」ようになります。
日本語と韓国語では口の開き方や舌の位置が大きく異なるため、体に新しい動きを覚えさせることが必須です。
ここからは、効果的に発音筋を鍛える5つの方法を紹介します。
① 短く・正しく・繰り返す
いきなり長い文章を読むより、1〜2音節の単語を集中的に練習する方が効率的です。
例えば
・ㄱ の平音と激音:「가」「카」
・パッチム練習:「밥」「밤」「방」
・鼻音の位置:「담」「단」「당」
練習のコツ
1. ゆっくり、正しい形で発音
2. 少しずつスピードを上げる
3. 10回連続で同じ質をキープ
正しい型を覚えたら、それを崩さないままスピードアップしていきます。
② 「真似る」だけではなく「型を再現する」
ネイティブ音声の丸暗記では、自己流の発音が定着しやすくなります。
重要なのは「音そのもの」ではなく、口の形・舌の位置・息の量を正しく再現することです。
チェック例
・激音 → 口の前にかざしたティッシュがうごくか?
・ㄹ → 舌が歯茎に“一瞬だけ”タッチしているか?
・ㅅ → 歯と歯の間から空気が漏れているか?
③ 自分の発音を録音して聞く
人間は、自分の声を正確に認識できません。
録音して客観的に聞くことで「思っていた音と違う!」というズレに気づけます。
録音練習の手順
1. ネイティブ音声(短いフレーズ)を用意
2. 自分で発音して録音
3. 両方を交互に再生して違いをメモ
4. 気になる箇所を集中的に修正
便利ツール
- 韓国語学習アプリ(Papago、Naver Dictionaryの発音機能)
- 録音アプリ(スマホ標準アプリでOK)
④ 「シャドーイング」で会話のリズムも習得
単語の練習が安定してきたら、次は文章で練習します。
おすすめはネイティブ音声を聞きながら同じタイミングで発音するシャドーイング。
やり方
1. 韓国ドラマやニュースの中の短いフレーズ音声を再生
2. 1〜2秒遅れて同じように発音(間を空けない)
3. 発音だけでなく、イントネーションやリズムも再現
ポイント
・最初は速度を落としてOK
・完全に同じリズムで言えるようになったらスピードを上げる
・聞こえた音をなぞるだけでなく、②で学んだ「音の型」を崩さない


⑤ 発音練習は毎日5分でOK
筋肉は使わないとすぐに戻ってしまいます。
しかし、1日5分でも毎日続ければ確実に変化します。
おすすめ5分ルーチン
・1分:子音・母音の型確認(鏡を見ながら)
・2分:単語練習(苦手単語を10回ずつ)
・2分:短い文章のシャドーイング
発音は、耳と頭で覚えるだけでは完成しません。
口と舌を“韓国語仕様”に鍛え上げることで、ようやく自然な発音が身につきます。
1日5分、この筋トレを積み重ねてみてください。
数週間後、口から出る韓国語は、確実に変わっているはずです。
まとめ:発音上達の3ステップ
1.耳を鍛える(聞き分けの基礎)
韓国語の発音は、まず「聞く耳」から始まります。
日本語には存在しない微妙な母音の違い、子音の息の強さ、音の長さやリズム。これらは最初、すべて同じように聞こえるかもしれません。
ですが、意識して何度も聞くうちに、不思議なことに「音の境界線」が見えてきます。
聞き分けられるようになった瞬間、それはもう発音上達の第一歩を踏み出した証拠です。
2.日本語との比較で理解(音の型を頭に入れる)
次は、その音の正体をつかむ段階です。
「ㅁ」は“さんま”の“ん”、「ㄴ」は“サンタ”の“ん”、“ㅇ”は“だんご”の“ん”──日本語の中にヒントはたくさん隠れています。近い音を見つけることで、「あ、これはこの口の形だ」と頭の中に音の設計図ができます。
この設計図は、覚えるだけでなく、応用して新しい単語の発音にもつなげられます。
3.声に出して筋肉を鍛える(再現力を高める)
そして最後は、声を出して自分の口と舌を韓国語仕様に鍛える段階です。
最初は違和感だらけかもしれません。
口の筋肉が疲れ、舌がうまく動かず、何度もやり直すことになるでしょう。
でも、それこそが成長の証。
スポーツ選手が日々筋トレを積むように、あなたも声を出すことで「発音筋」を育てていきます。
やがて、聞いた音をそのまま正確に再現できる日が必ず来ます。
この3つのステップを、焦らず、しかし確実に繰り返してください。
最初は難しく感じた韓国語の音が、ある日ふっと自分の口から自然に出てくる瞬間が訪れます。
その変化が訪れたとき、聞けなかった音が聞こえるようになり、伝わらない発音も少なくなっています。
韓国語は、努力を裏切らない言語です。
耳を澄まし、頭で理解し、声で表現し続ける限り、必ず発音は進化します。
ゆっくり一歩ずつ、この3つのステップで、韓国語を磨き上げていきましょう。
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