ニュージーランドでは、小学校へ入学する前の子どもたちは
ECE(Early Childhood Education)
と呼ばれる就学前教育を受けることができます。
ECEには、幼稚園にあたる Kindergarten や、保育園にあたる Childcare Centre など、いくつかの施設があり、家庭のライフスタイルや教育方針に合わせて選ぶことができます。
また、3歳から5歳の子どもを対象とした「週20時間ECE補助制度」があることから、「ニュージーランドの幼児教育は無料」というイメージを持たれることもあります。
しかし実際には、制度の仕組みや費用、園の種類、日本との教育方針の違いなど、知っておきたいことは少なくありません。
この記事では、
・ECEとはどのような制度なのか
・KindergartenやChildcare Centreの違い
・20時間補助制度の仕組み
・日本との教育方針の違い
について、実際に子どもを2つの園へ通わせた経験も交えながら分かりやすく紹介します
0〜5歳:就学前教育(Early Childhood Education)
ニュージーランドでは、小学校へ入学する前の子どもを対象とした教育・保育制度を ECE(Early Childhood Education) と呼びます。
ECEは、生後すぐから小学校入学前まで利用でき、子どもの年齢や家庭のライフスタイルに合わせてさまざまな施設を選ぶことができます。
ニュージーランドの幼児教育施設の種類
主な施設は次の4種類があります。
・Kindergarten(3〜5歳対象の公的な幼稚園)
・Childcare Centre(0〜5歳対象の保育園)
・Home-based care(ホームベース保育:保育士が自宅で少人数を預かる形式)
・Playcentre(親が主導する協同保育)
各施設の特徴は以下のようになります。
キンダーガーテン(Kindergarten)
3〜5歳を対象とした、教育色のやや強い幼児教育施設です。
多くは地域コミュニティが運営する非営利団体で、資格を持つECE教師が保育を行います。
遊びを通した学びを重視しながら、小学校への移行を意識した教育が行われています。
近年は1日6時間程度開園する施設も増えていますが、地域によって開園時間や運営形態は異なります。
チャイルドケア・センター(Childcare Centre)
0歳から就学前まで利用できる保育施設です。
朝から夕方までの長時間保育に対応している施設が多く、共働き家庭に最も利用されています。
教育だけでなく保育の役割も大きく、家庭の生活スタイルに合わせやすいのが特徴ですが、費用はやや高めです。
ホームベース保育(Home-based Care)
保育者の自宅で少人数の子どもを預かる保育スタイルです。
家庭的な雰囲気の中で、一人ひとりに合わせた保育が受けられます。
保育者をサポートする監督機関があり、定期的な訪問や指導が行われています。
プレイセンター(Playcentre)
保護者が主体となって運営する共同保育施設です。
0〜6歳の子どもと保護者が一緒に活動することが特徴で、親自身も子育てや幼児教育について学ぶことができます。
利用料は比較的安く、地域コミュニティとのつながりが深い施設です。
各施設の違いを比較
各施設を簡単にまとめると以下のようになります。
| 施設名 | 対象年齢 | 運営主体 | 教育重視 | 保育時間 | 費用 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Kindergarten | 3〜5歳 | 公的・非営利 | 高い | 短め | 安め | 小学校準備に |
| Childcare Centre | 0〜5歳 | 公私混在 | 中〜高 | 長時間可 | 高め | 共働き向け |
| Home-based Care | 0〜5歳 | 自宅+監督機関 | 中程度 | 柔軟(個別) | 中程度 | 家庭的+少人数 |
| Playcentre | 0〜6歳 | 保護者協同 | 親次第 | 親の関与次第 | 非常に安い | 親が主役 |
それぞれの施設に特徴があり、家庭の方針やニーズに応じて柔軟に選ぶことができるのがニュージーランドの幼児教育の大きな魅力です。
また、ECEは政府が「週20時間まで無料」を提供している点が特徴です。
これは3歳から5歳の子ども全員が対象で、認可施設を利用すれば公的補助を受けられます。
一方、ECEは必須ではなく、家庭保育でも問題ありません。
「20時間無償制度」の実情
この制度、言葉だけ聞くと、「幼稚園や保育園に無料で通える制度」という印象を受けがちなのですが、実際には週20時間のみの利用は現実的ではないため、追加料金(optional charge)が発生します。
ろは週5日利用しよう思うと、1日あたり4時間しか利用できないので、残りは追加料金が発生します
制度の「無料」は週20時間までというベース部分であり、それを超える部分に関しては施設ごとにルール・料金が異なり、家庭の実情に応じて費用負担が大きくなるのが現実です。
また、都市部や人気の施設になると、子どもが3歳になる前から事前予約や待機が必要になってきます。
このような点を考えると、費用の面では日本と大きな違いはないのかなと思います。
日本とニュージーランドの幼児教育の「考え方」の違い
1. 教育観の出発点が異なる
日本の幼児教育では、比較的
「小学校に向けた準備」
「しつけや集団行動」
「読み書き・数」
など、形式的な学習準備を重視する傾向があります。
一方、ニュージーランドの幼児教育では、遊び中心の学び(play-based learning)がベースで、
「子どもが何をしたいか」
「どう感じているか」
を尊重し、自発性と好奇心を育てる教育方針が徹底されています。
2. ニュージーランドでは「子どもが学びの主体」
ニュージーランドの幼児教育は、「テ・ファリキ(Te Whāriki)」という全国共通のカリキュラムに基づいています。
これはマオリ語で「織物」という意味で、子ども一人ひとりの成長を一枚の織物のように描くことを理念としています。
このカリキュラムは、
子どもを「受け身の存在」ではなく、「自ら学びを築いていく存在」
として捉えます。
例えば、
・葉っぱに興味を持てば、そこから自然や色、数などへ学びを広げる
・子どもの疑問や発見を先生が一緒に深めていく
というように、先生は「教える人」というよりも、学びを支える伴走者として関わります。
3. 年齢で一律に評価されない
日本では
「◯歳だからこれができるべき」
「遅れている・進んでいる」
という年齢基準の発達評価が多く見られます。
ニュージーランドでは
「子どもはそれぞれのペースで育つ」
という前提があり、年齢よりも子ども自身の関心や発達段階に合わせたアプローチが行われます。
4. 評価は「結果」ではなく「過程」に注目
日本では
「ひらがなが書けるようになった」
「お片づけができるようになった」
など、「できたこと」に注目する場面が多くあります。
一方ニュージーランドでは
「どうやってできるようになったのか」
「どんな試行錯誤をしたのか」
という「過程」を大切にします。
保育の様子は「Learning Story(ラーニングストーリー)」やポートフォリオとして記録され、保護者にも共有され成長を“物語”として捉える文化が根付いています。
わが子の就学前教育を終えて思うこと
ニュージーランドの幼児教育にはたくさんの魅力があります。
しかし、同時に「これは本当にこのままでいいのかな?」と感じることも少なくありませんでした。
わが家は、引越ししたことが理由で、「KIndergarten」と「Childcare Center」の二か所に子どもを通わせました。
2つの施設を実際に体験した保護者として感じた、ニュージーランドの幼児教育の素晴らしいと思ったことと、気になったことに以下のことがありました。
子どもがのびのび育つ環境
まず一番感じたのは、子どもが本当に楽しそうだったことです。
ニュージーランドの幼児教育は、「遊び」が中心です。
毎日決められた活動をこなすのではなく、
・自分で遊びを選ぶ
・興味のあることを深める
・外遊びをたくさんする
という環境が整っています。
息子も毎日楽しそうに園へ通い、その日に何をして遊んだのかを嬉しそうに話してくれることが多くありました。
また、先生が「これをやりなさい」と指示する場面は少なく、子ども自身が考えて行動することを大切にしていることも印象的でした。
日本のように「みんな同じことをする」よりも、一人ひとりの個性を尊重してくれる教育だと感じました。
「子どもが自分らしくいられる」ことを第一に考えるニュージーランドの教育は、型にはめることなく、その子らしい成長をサポートしてくれる柔軟性にあふれています。
自由がゆえの“気づきにくさ”と“リスク”
一方で、実際に親として子どもを預ける中で、「これはどうなんだろう…」と感じる瞬間もありました。
自由と個性の尊重を掲げる裏には、いくつかの見落とされがちな課題も潜んでいます。
自由さが、すべての子どもにとって最適とは限らないことも実感しました。
特に感じたのは、次の2つです。
1. 消極的な子が取り残されがち
園では子どもの自主性が大切にされるため、「自分から助けを求める」「やりたいことを選ぶ」ことが前提になります。
しかし、息子のように少し控えめで、自分の意思をなかなか外に出せないタイプの子にとっては、この環境が必ずしも居心地の良いものになるとは限りません。
先生たちはもちろん見守ってはいますが、
・気づいたら一人でポツンとしていた
・本当にやりたいことが言えなかった
ということもありました。
「自分で言わないと伝わらない」という環境は、自立心を育てる一方で、自己主張が苦手な子どもにとっては少し大変な環境でもあると感じました。
2. 安全面に対する不安
もう一つ気になったのが、安全に対する考え方です。
ニュージーランドでは、子どもの探究心を育てることを重視しているため、園内には日本ではあまり見かけない環境が用意されていました。
例えば
・本物のトンカチやのこぎりがそのままおいてある
・木材や釘などが普通におちている
・安全を第一前提にして設計されていない遊具構造
など。
もちろん、本物に触れる体験の大切さは理解していますが、それでも



「これって本当に大丈夫なのかな?」
と不安になる瞬間が何度かありました。
全ての園がそうであるわけではありません。
また、ニュージーランドの幼児教育が「遊びの中で学ぶ」ことを重視し、「個の発達」に光を当ててくれる教育であることは確かです。
けれど、その自由が子どもたちを見えにくい孤立や不安、リスクにさらしていることもあるのではないか、と感じることがあり、自由が時に放任になってしまう時があるのではと感じました。
自己主張の必要性
英語がほとんど分からない状態で入園した息子の場合は特に、自己主張することがむずかしく、時には無視をされているのではないかと感じることもありました。
最初に通ったKIndergartenでは、園から届くその日の活動や、成長の記録の写真に息子が映っていることがほとんどありませんでした。
引越しで園を移動する時に渡された息子の成長の記録のポートフォリオにも、ほとんど息子の写真がなく当時は悔しい思いもしました。
もちろん、これはニュージーランドの幼児教育全体の問題ではなく、その園や担当してくださった先生との相性もあったのだと思います。
その後、引っ越し後に通ったChildcare Centerは、よりアットホームなところで、色々ケアもしてくれましたが、私たちも最初の経験から、色々と園に言葉かけをするように心がけました。
日本ではないので、時には「言いすぎかな」と思うくらいに自己主張をしなければ、自分たちにとって不利益になることがあるということを学びました。
その後、引っ越しを機に通ったChildcare Centreでは、より家庭的な雰囲気の中で細かなケアもしていただきました。
また、私たち自身も最初の経験を踏まえ、気になることがあれば積極的に先生へ伝えるよう心掛けるようになりました。
日本では遠慮するような場面でも、「気になることはきちんと伝える」ことが、自分たちや子どもを守るためには大切だと学びました。
今でも「あの時もっとできることがあったのではないか」と考えることはあります。
それでも、この経験があったからこそ、ニュージーランドで子育てをする上で大切なことを学べたとも感じています。
この経験を通して感じたのは、自由な教育環境だからこそ、家庭と園がしっかり連携しながら子どもを見守っていくことの大切さです。



息子にはつらい経験をさせてしまったかもしれないと、いまだに後悔することもあります
まとめ
ニュージーランドの幼児教育(ECE)は、子どもの自主性や遊びを大切にする教育が特徴です。
KindergartenやChildcare Centreなど複数の施設があり、それぞれ特徴が異なるため、家庭のライフスタイルや子どもの性格に合わせて選ぶことができます。
一方で、20時間補助制度の仕組みや園ごとの違いなど、日本とは異なる点も多くあります。
また、実際に子どもを通わせてみると、自由な教育の良さを感じる一方で、親として戸惑う場面もありました。
制度だけでなく、実際の雰囲気や考え方を知ったうえで、自分たちの家庭に合った園を選ぶことが大切だと感じています。
ニュージーランドで子育てを始める方や、これからECEを利用する方にとって、この記事が少しでも参考になれば幸いです。









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