海外の子どもの母語はどう決まる?第一言語・継承語の違いと仕組みを解説

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海外で子育てをしていると、次のような疑問を持つ方が多いのではないでしょうか。

・子どもの母語はどうやって決まるのか?

・家では日本語を話しているのに、なぜ弱くなるのか?

・第一言語と母語は同じではないのか?

特に海外育児では、「母語」という言葉の意味を正しく理解していないと、言語教育の方向性を間違えてしまうことがあります。

結論からいうと、子どもの母語は「教えた言語」ではなく、最も多く使われた言語によって決まります。

そのため海外育児では

・日本語で育てているつもりでも英語が母語になる

・会話はできるのに日本語の力が伸びない

といったことが起こります。

この記事では、ニュージーランド在住の日韓家庭でトリリンガル育児を現在進行形でおこなっている筆者(父)が

・母語の正しい定義

・第一言語・継承語との違い

・母語が決まる具体的な仕組み

・海外で母語が変化する理由と対策

について、わが家の実体験を交えながら、体系的に解説します。

目次

母語とは何か?

まずは、母語とは何であるか基本の考え方を整理しましょう。

母語の定義

母語とは一般的に、「幼少期に自然に習得した言語」と説明されます。

しかし海外育児においては、この定義だけでは不十分です。

実際には最も自然に使え、無意識に思考できる言語これが母語の本質です。

母語は「考える言語」

子どもは成長するにつれて

・考える

・判断する

・感情を処理する

といった場面で特定の言語を使うようになります。

このとき使われる言語が母語です。

つまり会話ができる言語と、母語は必ずしも一致しません。

わが家の現在7歳11ヶ月の息子の場合、「最も自然に使え、無意識に思考できる言語」は、圧倒的に韓国語です。

しかし、「感情を処理する場面」では、日本語もでてきます。

もちろん、学校生活は英語ですので、英語での考え方も育ってきています。

この状況を踏まえると、現在の環境下では、韓国語、日本語、そして英語も彼の中では「母語」として育ちつつあるのではないかと考えています。

よくある誤解

母語については次の誤解が非常に多く見られます。

・母語は母親の言語である

・母語は国籍で決まる

・母語は一生変わらない

いずれも正確ではありません。

例えば日本人家庭でも、海外で育てばその国の現地語が母語になることは珍しくありません。

そのため、特にわが子が日本語を母語として維持して欲しいと考えるならば、「母語は一生変わらない」というのは誤解であると、しっかり認識する必要があります

わが家の息子の場合も、彼の使用言語を日本語と英語で比べると、小学校に通い始めてから2年ほどたった現在は、やや英語の方が自然にでてくる言葉になりつつあります。

ろは

これは今後の環境次第で、彼にとって日本語は母語ではなくなる可能性も十分にあるということだと感じています。

第一言語・継承語との違い

海外育児では「母語」「第一言語」「継承語」の3つを分けて考えることが重要です。

ここでは簡単に整理しますので、詳しくは以下の記事を参照下さい。


第一言語(L1

第一言語とは、子どもが乳幼児期に最初に自然に習得した言語を指します。

この定義は習得の順番に基づいており、現在の流暢さや使用頻度には関係しません。

・習得順が基準

・同時に複数存在する場合もある

母語

母語とは、幼少期に自然に習得し感情や思考の基盤となる、最も自然に使える言語です言語を指します。

ただし、成長や環境の変化により、本人にとって母語のように感じられる言語が変わることもあります。

・思考に使う

・無意識で使える

継承語

継承語とは、家庭から受け継ぐ言語です。

家庭内では話されているけれど、社会的には少数派の言語のことを指します。

多くの場合、親の母語や文化的ルーツとなる言語がこれにあたります。

・社会では使われにくい

・意識しないと弱くなる

海外育児での典型例

使用言語が

・家庭:日本語

・学校:英語

この場合

・第一言語:日本語

・母語:英語

・日本語:継承語

となることがあります。

このズレを理解することが非常に重要です。

子どもの母語はどう決まるのか

結論は明確です。

母語は「使用量」と「必要性」で決まります。

子どもの母語がどう決まるのかは以下の4つの要素が大きく影響します。

インプット量(どれだけ聞くか)

子どもは

・家庭での会話

・周囲の言語

・メディア

から言語を吸収します。

つまり、最も多く聞いた言語が優勢になります。

使用頻度(どれだけ使うか)

言語は使うことで定着します。

・親との会話

・友達との会話

・学校生活

つまり、使用頻度が高い言語が強くなり定着しやすくなります。

感情との結びつき

見落とされがちですが、じつはこれが非常に重要な要素です。

・叱られる

・褒められる

・甘える

などの感情が動く場面で使われる言語は、深く定着します。

必要性(使わないと困るか)

子どもは必要な言語を優先して伸ばします。

例えば

・学校では英語が必須

・家庭では日本語が不要でも生活できる

この場合、英語が優先されます。

母語は変わるのか

結論として、母語は変化する可能性があります。

成長による変化

幼児期は家庭の言語が強くなりますが、学齢期以降は

・学校

・友達

・社会

の影響が強くなります。

その結果、思考に使う言語が変わることがあります。

9歳前後の重要な変化

子どもの言語発達において、9歳前後は非常に大きな転換点です。

幼少期の言語は主に

・日常会話

・簡単な指示

・身近な出来事

といった「生活言語」が中心です。

しかし小学校中学年以降になると

・なぜそうなるのか説明する

・抽象的な言葉を理解する

・長い文章を読み取る

といった「学習言語」が必要になります。

またこの時期になると、それまでの「感覚的な言語理解」から

・抽象的思考(目に見えない概念を理解する力)

・論理的理解(理由や因果関係を説明する力)

・学習言語(教科書や説明文を理解する力)

のような能力が求められるようになります。

つまり、「生活言語」から「学習言語」への移行です。

9歳前後が母語の決定に与える影響

この段階で重要なのは、どの言語で学習が行われているかです。

例えば英語圏の場合

・学校 → 英語

・家庭 → 日本語

という環境では、

・抽象的な思考

・論理的な理解

・学習内容の理解

これらがすべて英語で行われます。

この結果どうなるかというと、思考のベースとなる言語が固定されやすくなるということです。

つまり

・何かを考えるとき

・理由を説明するとき

・学校の内容を理解するとき

に使われる言語が、そのまま「母語」として定着しやすくなります。

海外育児でよくあるケース

海外で育つ子どもは、日常会話は日本語でも、理由を説明したり学習内容を考える場面になると英語になる、という状態になりやすいです。

例えば

・簡単な会話 → 日本語

・勉強や説明 → 英語

この状態が続くと、英語が「考える言語」になっていきます

そのため、

読解

・思考

・学習

が英語中心であれば、日本語は「話せるけど深く考えられない言語」になりやすくなります。

つまり 日本語が学習言語として使われていなければ、いくら家庭で日本語を使っていても英語に比べ、日本語は弱くなってしまう原因となるのです。

9歳前後は、 言語が「コミュニケーションの道具」から「思考の道具」に変わる時期です。

そしてこのとき優勢な言語が、母語として定着しやすくなるという点が、海外育児において非常に重要です。

なぜ海外で日本語が弱くなるのか

9歳前後の変化でも述べましたが、主な理由は言語環境の偏りです。

海外での生活が長くなれば使用言語が

・学校:英語

・友達:英語

・社会:英語

といったように、日本語は使用機会が限定されています。

その結果、日本語は「理解できるが使えない言語」になりやすい状態になります。

より詳しい説明については、以下の記事で解説しています。

日本語は忘れてしまうのか

結論として、完全に消えることは少ないですが、弱くなることは多いです。

特に影響を受けやすいのは

・読解力

・語彙力

・書く力

です。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

母語として日本語を維持する方法

海外で日本語を母語として維持するためには、「自然に任せる」だけでは不十分です。

なぜなら、子どもは必要性が高く、使用頻度の多い言語を優先して伸ばすからです。

そのため、日本語を維持したい場合は、意識的に「使われる環境」を作ることが重要になります。

母語が決まる要素については、4つあると解説しました。

つまり、母語として日本語を維持する方法とは、『子どもの母語がどう決まるのか』でとり上げた4つの要素を日本語に置き換え、効果的な方法で継続的に行うことが大切です。           

ここでは、実際に効果のある方法の4つとその継続について解説します。

インプットを確保する

まず最も重要なのが、日本語に触れる量を確保することです。

子どもは聞いた言語をベースに言語能力を形成するため、

・日本語の本を読む

・親が日本語で話しかける

・日本語の動画や音声に触れる

といった継続的なインプットが必要です。

特に海外では、日常生活の大部分が現地語になるため、意識しないと日本語のインプットは簡単に不足する、という点に注意が必要です。

わが家では、息子が2歳のころに始めた日本語の絵本の読み聞かせを、7歳11ヶ月の現在でも続けています。

私が読むだけでなく、息子にも朗読してもらいその内容についてお互いに話をしたりして、読むことと会話することを一緒におこなっています。

使用機会を作る

言語はインプットするだけでは定着しません。

実際に使うことで初めて、自分の言葉として身につきます。

そのため

・家庭内で使う言語のルールを決める

・日本語で会話する時間を意識的に作る

といった取り組みが有効です。

食事中に日本語で会話をするなど、無理のない形で継続できる仕組みが重要です。

わが家の場合、母親(韓国人)が韓国語で話し、父親である私(日本人)が日本語で話しかけ、息子は母には韓国語で、父には日本語で話すというスタイルが家庭内言語のルールになっており、家庭内では韓国語と日本語を使用する機会をたくさん作るようにしています。

感情を日本語で共有する

日本語を母語として定着させるために、効果が高いのがこの要素です。

子どもにとって言語は単なるコミュニケーション手段ではなく、感情と結びついた体験そのものです。

そのため

・叱る

・褒める

・気持ちを伝える

といった場面を日本語で行うことで、

日本語が「感情を伴う言語」として定着しやすくなります。

逆に、感情的なやり取りがすべて現地語で行われると、その言語が優先されやすくなります。

わが家では、この感情を伝える場面では特に

・母親→韓国語

・父親→日本語

を徹底しておこなっていたので、息子は痛い、怖いなどの突発的な感情表現や、怒られた後に泣きながら謝るときなどの場面で、母親といる時は韓国語が、父親といる時は日本語が自然とでてくるようになっています。

必要性(日本語を使いたいと思ってもらう)

子どもは必要性が低い言語はあまり使わなくなります。

そのため、日本語が話できないと不便が生じる気持ちを育てることが大切です。

例えば

・家族とのコミュニケーション

・お気に入りのコンテンツ視聴

・自分のアイデンティティ形成

などを、日本語を使って理解したいと思う気持ちです。

特に海外在住で日本に祖父母や親戚など家族がいる場合は、日本語で会話をしたいという気持ちを育てることが必要です。

わが家の場合も、日本にいるおじいちゃん、おばあちゃんと話がしたい、だから日本語をちゃんと話せないといけないんだ、と思う気持ちが芽生えたことが大きかったです。

継続する(最も重要)

言語は短期間で身につくものではありません。

むしろ、一度環境が変わるとバランスは簡単に崩れます。

例えば

・学校生活の開始

・友達関係の変化

・年齢による興味の変化

などによって、言語の使用割合は大きく変わります。

そのため重要なのは短期間の成果ではなく、長期的に続けられる環境を作ることです。

無理に厳しいルールを作るよりも、自然に続けられる形で日本語を生活に組み込むことが結果的に最も効果的です。

わが家の多言語育児のケース

最後にわが家のケースを実体験としてご紹介します。

わが家は

・父親(私)→日本人

・母親(妻)→韓国人

・息子   →韓国生れ、法的に決められた時まで日本と韓国の二重国籍

・居住地  →息子が1歳のときに移住し、現在はニュージーランド在住

という家庭です。

息子の言語の変化

わが家では、息子が生まれた時から息子に話しかける言語は

・父親(私) →日本語

・母親(妻)→ 韓国語

という取り決めをしていました。

これは、OPOL(One Parent, One Language)、という「ひとりの親がひとつの言語を使う」という育児スタイルです。

途中うまくいかないこともありましたが、それでも息子が7歳11ヶ月の現在も進行形で実戦しています。

また韓国にいた1歳までの間は、母親はもちろん母方の祖父母や親戚家族、そして外の世界から聞こえてくる言葉は全て韓国語です。

日本語は私が語りかける言葉だけでした。

またニュージーランドに移住してからも、最初の3年ほどはコロナ禍の隔離生活が長かったため、あまり外の社会(英語)に触れることがありませんでした。

母親と過ごす時間がもちろん一番長いこともありますが、韓国人のママ友も多かったので、3歳ころまでの息子の耳に入る言語の比率は

・韓国語 : 60%

・日本語 : 35%

・英語 : 5%

程度で日本語は、ほぼ私が話すことが全てでしたので高くありませんでした。

そして3歳がすぎ、コロナ禍も少し落ち着いて幼稚園に入園すると、少しずつ英語の世界も広がり始めました。

幼稚園を卒園した5歳の時の息子の言語比率は

・韓国語 : 60%

・日本語 : 30%

・英語 : 10%

でした。

ところが、小学校に入学して2年が経った7歳8ヵ月頃になると、英語が急に上達しました。

入学当初は学校でも、韓国人の友達とばかり遊んでいたのが、だんだんと現地の友達とも遊ぶようになり、私と日本語で話しをしていても、わからない単語や表現を英語で言ったりするようになり始めました。

彼の中で必要な言語として、英語が大きな割合を占めてきたことを知ることになりました。

ろは

これは、私と息子の会話が少なくなれば、あっという間に日本語は英語に抜かれてしまうことを意味していると思います。

そんな息子の、7歳11ヶ月現在の言葉の使用率は

・韓国語 : 60%

・日本語 : 20%

・英語 : 20%

となっています。

生まれからずっと変わらず強い言語は韓国語ですが、日本語は少しずつ落ちていっています。

また息子本人も、韓国語で話すのが一番楽だといっています。

 家庭での言語割合

家庭内では、英語を使うことはほとんどありません。

ルール通り、

・母親と会話→韓国語

・父親と会話→日本語

です。

息子は私が韓国語を話せることを十分に理解しているので、日本語で話すのが難しくなると、韓国語で話しを続けようとすることがあります。

そんな時は、息子の話した内容を日本語で言い直しながら相づちをうって、話の続きを促すようにしています。

日本語の課題

息子にとって日本語を聞いたり使ったりする対象は、ほぼ私との会話だけです。

そのため、語彙力や表現力がとても不足しています。

また、同年代の日本の子に比べれば、朗読の量も足りていませんし、漢字は全くおいつていません。

日本語を維持するためにしていること

私が息子の日本語を維持するためにしていることは5つあります。

1. OPOL(One Parent One Language)の徹底

2.絵本の読み聞かせ

3.机に向かう時間をつくる

4.日本の番組をみる

5.会話の時間をつくる

詳しくは以下の記事の『わが家のケース:海外で日本語を維持するためにしている5つのこと』を参照ください。

息子の日本語を維持するためにしていることで,

特に日本語の表現については、私との会話がほぼ全てになっているので、『4.日本の番組をみる』実践することで、子どもらしい言葉づかいを覚えたりすることができています。

また『5.会話の時間をつくる』は、私との会話だけでなく、LINEのテレビ電話を利用して、日本の家族(おじいちゃん、おばあちゃん)と話す時間も定期的に作るようにしています。

このことをとおして、日本語で会話することだけでなく、自分を大切に思ってくれる家族が日本にいて、日本という国に愛着が芽生えるようになりました。

まとめ

本記事では、子どもの母語がどのように決まるのかを、「母語」「第一言語」「継承語」の違いとともに解説しました。

母語とは、最初に覚えた言語ではなく、最も自然に使え、思考に使われる言語です。

そのため海外育児では、

・第一言語(最初に覚えた言語)

・継承語(家庭で使う言語)

・母語(最も使われる言語)


が一致しないことも珍しくありません。

そして


母語は固定されたものではなく

・使用量

・必要性

・感情や思考との結びつき

によって変化していきます。

特に学齢期以降は、学習や思考に使われる言語が母語として定着しやすくなるため、環境の影響はより大きくなります。

そのため

日本語を母語として維持したい場合は

・インプットを確保する

・使用機会を作る

・感情や思考を日本語で共有する

といった環境づくりが重要です。

最後に重要なポイントとして、母語は教えるものではなく、使われ方によって決まるものです。

日々の言語環境が、子どもの母語を形作っていきます。

この記事が、言語教育の方向性を考えるヒントになれば幸いです。

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