海外で子育てをしていると、多くの日本人家庭が同じ疑問を持ちます。
「海外で育つと子どもは日本語を忘れてしまうのだろうか?」
英語圏など海外で生活していると、学校や友達との会話はほとんどが現地の言語になります。
そのため、家庭で日本語を話していても、子どもの日本語が徐々に弱くなっていくのではないかと不安になる親は少なくありません。
結論から言うと、海外で育つ子どもが日本語を完全に忘れることはほとんどありません。
しかし環境によっては、日本語よりも英語などの社会言語の方が強くなることはよくあります。
この記事では、
ニュージーランド在住の日韓家庭でトリリンガル育児を現在進行形でおこなっている筆者(父)が、
・海外で子どもの日本語がどのように変化するのか
・家庭でできる日本語教育の工夫について
を解説します。
海外で子どもは日本語を忘れるのか【結論】
結論から言うと、海外で育つ子どもが日本語そのものを完全に忘れてしまうことはほとんどありません。
しかし次のような変化はよく起こります
・日本語より英語の方が話しやすくなる
・日本語の語彙が少なくなる
・日本語で長い文章を話すのが難しくなる
これは言語学では「優勢言語(dominant language)」の変化と呼ばれることがあります。
子どもは生活の中で最も多く使う言語を自然に優先して使うようになります。例えば英語圏の学校に通っている場合、授業・友達・社会生活の言語は英語です。
そのため英語が強くなるのは自然なことです。
わが家でも、息子が現地の小学校に通い始めて1年ほど経ったのち、急速に英語力が伸びました。
そしてそれに伴い、日本語での会話をする時に単語がでてこないなどの現象がおきています。
日本語に関しては、私との会話が全てなので、語彙力が英語や韓国語に比べて圧倒的に少なくなってしまっているのが原因だと感じています。

海外で子どもの日本語が弱くなるのは何歳頃?
多くの場合、日本語が弱くなり始めるのは小学校に入る頃と言われています。
幼い頃は家庭で過ごす時間が長いため、家庭の言語の影響が大きくなります。
しかし学校生活が始まると、友達との会話や授業の言語が社会言語になります。
その結果、子どもの日常言語は自然と
・学校 → 社会言語
・家庭 → 日本語
という構造になります。
この時期に日本語を使う機会が少ないと、日本語の語彙や表現力が伸びにくくなることがあります。
わが家場合も、正にこれに相当しています。
小学校入学当初は英語での生活を心配するほどでしたが、学校生活に慣れ現地の友達もできてくることにより、英語の実力と使用頻度がとても高くなりました。
学校には韓国人の友達も多いので、学校生活では英語と韓国語を使用して生活しているようです。
日本語はというと、学校に日本人の友達も多少はいますが、学校内ではお互いにあまり日本語は使わないと言っています。
海外で日本語が弱くなる理由
海外で子どもの日本語が弱くなるのには、いくつかの理由があります。
1. 社会の言語が英語などの現地語だから
海外では学校や友達との会話のほとんどが現地語になります。
子どもにとっては
・授業
・友達
・遊び
すべてが現地語で行われるため、その言語が自然と強くなります。
わが家の場合は、
・友達
・遊び
の部分において、学校以外では韓国語を使う事がまだ多いので、間もなく8歳を迎える息子の現在の社会言語は英語と韓国語になっています。
ろは現地の友達と学校外でも遊ぶようになってからの英語の上達はとても早かったです。
2 .日本語を使う友達が少ない
日本では周囲の子どもが全員日本語を話します。
しかし海外では、日本語を話す友達が少ないことが多く、日本語は「家庭の言語」だけになりがちです。
言語は使う機会が多いほど強くなるため、日本語を使う相手が少ないと日本語の使用量も減ってしまいます。
わが家もまさにこの通りです。
基本的に日本語を使う相手は、父親である私だけです。
韓国語はというと、英語圏に住んでいますが、息子の友達はまだ韓国人が一番多いです。
そのため学校に通い始めて英語の使用増えてからも、韓国語の使用頻度はまだ一番高いです。
また、家庭内でも父親である私よりも、母親と過ごす時間の方が長いため、韓国語、英語、日本語の中では日本語を話す機会が一番少なくなってきています。
3 .日本語で読む環境が少ない
日本語を維持するためには、読む力(読解力)が非常に重要です。
しかし海外では
・日本語の本が少ない
・日本語の図書館がない
・学校教育が現地語
という環境のため、日本語で読む機会が減りやすくなります。
その結果、日本語の語彙力が伸びにくくなることがあります。
また、目に入ってくる情報も、日本で生活していれば、街を歩いているだけでも看板などからひらがな、カタカナ、漢字と日本語での情報が自然と多く目に飛び込んできます。
しかし、海外で生活していると自然と目に入ってくる情報に日本語含まれていること少ないです。
積極的に文字に触れようとしなければ、日本語の文字に触れる機会は少なくなってしまいます。
わが家では、息子はまもなく8歳を迎えるところですが、継続して絵本の読み聞かせをおこなっています。
また読み聞かせるだけでなく、息子にも朗読をしてもらったりもして、文字にふれる機会を作っています。
4 .年齢が上がると社会言語が優勢になる
子どもが成長すると、友達との関係が広がり社会の影響が大きくなります。
その結果、学校や社会で使う言語が子どもの優勢言語になることが多いです。
わが家息子は、小学校に通い始めて2年が経ったころから、日本語で会話をしていて、日本語の単語が出てこない時に単語だけ英語で表現することが増えてきました。
5 .家庭での会話時間が減る
年齢が上がると、子どもは友達との時間が増えます。
その結果、家庭での会話時間が減り、日本語を使う機会も減ってしまいます。
言語は使う頻度が減ると弱くなるため、日本語の使用量が少なくなると日本語の力も低下しやすくなります。
海外で日本語を維持している家庭の特徴
海外でも子どもの日本語を維持できている家庭には、いくつかの共通点があります。
例えば次のような特徴です。
・家庭では日本語で会話する
・日本語の本を読む習慣がある
・日本語を使うコミュニティがある
・日本語教育を意識している
重要なのは家庭の言語環境です。
家庭で日本語を聞き、話す環境があると、日本語を自然に維持しやすくなります。
海外で子どもの日本語を維持する5つの方法
海外で日本語を維持するためには、家庭での工夫が重要です。
1. 家庭では日本語で会話する
家庭内で日本語を使うことは、日本語維持の基本です。
子どもが大きくなり、自分の時間を持つようになると、親子の会話は自然と少なくなっていきます。
それでも海外在住の家庭では、子どもとの会話の時間を少しでも確保し、日本語で話しをする姿勢がたいせつです。
子どもが現地語が不得意な場合は、外での生活の為に少しでも早く習得させようと家でも現地語を使いがちです。
しかし、将来的にも子どもに日本語を維持してもらいたいと思うのであれば、家庭内では日本語で会話する姿勢が大切です。
2 .日本語の本を読む習慣を作る
日本語を維持するためには読む力が重要です。
例えば
・日本語の絵本
・日本語の児童書
・日本語の学習漫画
などを家庭で読む習慣を作ることで、日本語の語彙力を伸ばすことができます。



わが家の息子も本を読まない期間が長くなると、一部のひらがな、カタカナさえも忘れてしまって、音読ができないときもよくあります。
3. 日本語教材を活用する
海外で日本語維持には、日本語教材を積極的に利用することが効果的です。
例えば
・ひらがなドリル
・日本語通信教材
・日本語学習アプリ
などです。
こうした教材は、日本語に触れる時間を増やすのに役立ちます。
日本の子どもとは日本語に触れる量が圧倒的に少ないので、子どもが小さいうちは、アプリなども便利でよいですが、個人的には実際にペンで紙に「書く」ドリルなどの教材を利用することをお勧めします。
4 .日本語を使う機会を作る
日本語を維持するためには、日本語を使う機会が重要です。
例えば
・日本人コミュニティ
・日本語補習校
・日本の親戚との会話
など、日本語を使う環境を意識的に作ることが効果的です。
私たち家族はニュージーランドに住んでいますが、周りには韓国人の家庭も非常に多いです。
そして彼らの子どもたちは、韓国在住の同年代の子どもに比べれば足りない部分もあると思いますが、しっかりと韓国語を維持し話すことができています。
ニュージーランドでは、韓国人コミュニティが発達しており、集まりや、塾のような補習校もたくさん存在しています。
また、韓国にいる家族とのコミュニケーションもとても大切にしていて、韓国にいる祖父母や親せきとも、カカオトークのテレビ電話で頻繁に会話をしている過程が多いです。
ハングル学校と呼ばれる韓国語の補習校や、テコンドーの教室に通う子どもたちもたくさんいます。
外の世界が英語環境でありながらも、内の世界で韓国語を使う機会を多くつくっているということが、海外在住でありながらも彼らの子どもたちが、韓国語を習得、維持している理由なのだと思います。
海外にいるから日本語より現地語の習得が先だと、考えることもあると思います。
もちろん、学校では現地語で授業がおこなわれるため、言葉がわからなければ授業についていけなかったり、友達ができないかもしれないという心配もあるでしょう。
しかし、授業の内容は家でフォローすることも可能です。
そしてなによりも、もちろん個人差はありますが、子どもは親が思いうよりずっと強いです。
言葉の壁があっても一緒に遊ぶ友達を作って学校生活に溶け込んでいきます。
日本語を話さなくなったり、話せなくなったりしたあと、それを取り戻すことの方がはるかに大変です。
海外で育ったため、日本語を聞けばある程度の理解はできるが話せなかったり、読み書きができなかったりする子どもはたくさんいます。
そのため、子どもの日本語を使う機会を増やすために、現地に日本人コミュニティなどがあれば、それを利用するのもよい方法です。
日本に家族がいれば、LINEのテレビ電話などを利用して日本語で家族と話しをする機会をもうけることも重要です。
日本にも家族がいるんだと、子どもに感じてもらうことで、日本という国にアイデンティティをもち、日本の家族と日本語で話がしたいと子どもに感じてもらうことができれば、これほど嬉しいことはないです。
5 .日本語をポジティブに感じる環境を作る
子どもが日本語を使いたいと思うことも重要です。
例えば
・日本のアニメ
・日本の本
・日本文化
など、日本語に興味を持つきっかけを作ることが役立ちます。
特に子どもが小さいときは、絵本は日本語を楽しんで使うきっかをつくる本当によい教材です。
キャラクターものの絵本などは、子どもがそのキャラクターを見たいがために本を開き、そのキャラクターの言動をまねしようとします。
子どもが日本語を楽しんで学ぶ、使おうとする、とてもよい循環がおきます。
わが家では、「バムとケロ」、「ぐりとぐら」、「パンどろぼう」など、シリーズものを読み聞かせ、日本語の語感を楽しく話すきっかけになりました。
また日本語は、英語の「アルファベット」や韓国語の「ハングル文字」とはちがい、「ひらがな」「カタカナ」「漢字」と表記が多様です。
本を開くことによって、日本語という文字に興味をもち、読めるようになりたい、書けるようになりたいという気持ちが子どもに芽生えるきっかけにもなります。
我が家の三言語育児のケース
ここでわが家が実践している三言語育児について、いくつか紹介します。
家庭の言語ルール
わが家は母親(妻)が韓個人、父親(私)が日本人、居住地がニュージーランドの多言語家庭です。
子どもが産まれたときから子どもと話す言語は
母親(妻) → 韓国語
父親(私) → 日本語
とルールを決めていました。
これは、OPOL(One Parent, One Language)という「ひとりの親がひとつの言語を使う」という育児スタイルです。
ルールだけを聞くと簡単に見えますが、一貫性を持って実践しようとするとなかなか難しいです。
わが家でも何度もやり直しをしながら、息子が7歳の現在は
・「お父さん=日本語」
・「お母さん=韓国語」
・「外の世界=英語」
という言語のスイッチができあがりました。


子どもの言語の変化
わが家がニュージーランドに移住したのは、息子が1歳になったときです。
移住してから間もなく、コロナによるロックダウンが起き、人と接することを避ける生活が長く続いたこともあり、息子は言葉を話すようになってからも英語に触れる機会は非常に限られていました。
そのため、6歳で小学校に入学したばかかりの頃の子どもの言語比率は
・韓国語60%
・日本語30%
・英語10%
といった感じでした。
小学校に入学しても最初の1年は、同じクラスに韓国人の子がいたこともあり、言葉の使用比率に大きな変化はありませんでした。
ところが小学校も2年目になると、少しずつ英語の使用比率が高くなってきました。
隣の家に英語圏の同級生が住んでいたこともあり、その子と仲良くなるにつれて、英語が飛躍的に上達し、学校でも英語圏の友達がたくさん増えました。
そうなってくると、ほぼ私としか使わない日本語は少しずつ伸びなくなってきました。
そんな息子の7歳10ヶ月現在の言語比率は
・韓国語60%
・日本語20%
・英語20%
となっています。
母親との時間を含め、韓国語を使用する時間に大きな変化はありませんが、学校生活と友人関係で英語の比率が高まるにつれて、日本語の使用比率が減り、日本語のみでの私との会話に以前よりも不便を感じているようにみえます。



これは、私が気を抜くと一気に日本語が消えていってしまうというサインだと思い、危機感を持って子どもと接しています。
日本語が弱くなった時期
7歳10ヶ月の現在、日本語が弱くなりかねないサインが出ていますがそれ以前にも、息子が日本語を話さなくなる時期がありました。
それは息子が2歳になる少し前のことでした。
その頃の私は、妻が子どもに韓国語で話しかけていると、私も一緒に韓国語で話しかけたりと、家庭内の言語ルールを守らないことが多かったのです。
妻からは、「あなたが日本語を使わないと、この子も日本語を使わなくなっちゃうよ」と何度も言われていたのですが、私は「自分は日本で話しかける」ということを徹底できませんでした。
そのように過ごしていると、以前は私が日本語で話しかけると日本語でおうむ返しをしたり、日本語で返事をしていた息子が少しずつ、私が日本語で話しかけても韓国語で反応するようになってきました。
私が日本語で話しかけても、日本語で返事をしてくれない・・・・。
「息子が日本語を話さなくなってしまうかもしれない」とようやく危機感を抱いた私は、それから息子の日本語と本気で向き合うようになりました。
韓国語と日本語、英語の言語の切り替えスイッチが形成されてと感じる現在でも、少しでも私が気を緩めると、日本語は一番話さなくなってしまう言語です。
そのため、最初に息子が日本語を話さなくなった時期のことを心に刻んで息子の日本語と向き合っています。


日本語を維持するためにしていること
私が息子の日本語を維持するためにしていることは5つあります。
それは
1. OPOL(One Parent One Language)の徹底
2.絵本の読み聞かせ
3.机に向かう時間をつくる
4.日本の番組をみる
5.会話の時間をつくる
です。
詳しくは以下の関連記事をご覧ください。


この中でも私が一番に力をいれてやったことは、「2.絵本の読み聞かせ」です。
2歳のころに日本語をあまり話してくれなくなっていた息子に毎日毎日、絵本の読み聞かせを行ないました。
それによって、息子は再び日本語を話すようになりました。
この経験から毎日ではなくなりましたが、息子が7歳10か月の現在でも絵本の読み聞かせはおこなっています。
日本語だけでなく、韓国語の絵本も母親による読み聞かせをおこなっています。
また、息子にも朗読をしてもらうことで、読めない文字を確認したり、苦手な発音を知ることができたりもし絵本の読み聞かせを始めたことでたくさんのことを得ることができました。
なによりも本を開くということの習慣が身についたということが大きかったです。
もうひとつ大切にしているのが、「5.会話の時間をつくる」です。
毎日会話の時間をつくって日本語で会話をすることで、息子は自分の中の日本語の表現をフル回転させて自分の言いたいことを伝えようと努力してくれます。
ときには上手くいえなかったり、日本語での言い方がわからなかったりすることがあり、イライラすることもありますが、そんな時は英語や韓国語で話してもらい、日本語での言い方を教えてあげたりしています。
これは学習というより、親子のコミュニケーションですので、お互い楽しく過ごすことができます。
もうひとつの会話として、日本の祖父母とLINEをつかったテレビ電話があります。
1歳の時にニュージーランドに移住している息子は祖父母の記憶はありませんでしたが、それでも、定期的にテレビ電話で顔を見せては、あいさつ程度の会話をしていました。
その後、5歳の時に日本に一時帰国した息子は、私の両親であるおじいちゃん、おばあちゃんにとてもなついてくれて、ニュージーランドに戻ったのちは自分から定期的にテレビ電話をしたがるようになりました。
息子があまり日本語で話そうとしない時に、



日本語が話せないと、日本のおじいちゃんとおばあちゃんとお話しできないよ
というと、頑張って日本語をつかう努力をしてくれます。
このように、日本に家族がいると思ってもらうことも、子どもが日本語を話そうとする大きな意味をもちます。
まとめ
海外で育つ子どもが日本語を完全に忘れてしまうことはあまりありません。
しかし生活環境によっては、英語などの社会言語が強くなり、日本語が弱くなることはよくあります。
そのため海外で日本語を維持するためには
・家庭で日本語を使う
・日本語の本を読む
・日本語教材を活用する
・日本語を使う機会を作る
といった家庭での取り組みが重要になります。
海外での子育てでは言語環境のバランスが難しいですが、家庭での工夫によって子どもの日本語を育てることは十分可能です。
難しく考えず、子どもとの日本語での会話を楽しみながら、親子で一緒に成長しようと思うことが、楽しく子どもの言語に向き合っていけるなによりの秘訣です。










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